A-PAB 4K8K放送番組制作奨励制度による7作品の上映会開催

A-PABは2月12日、13日の両日、民放ローカル局等の4K8K番組制作力向上のために設けられた4K8K放送番組制作奨励制度で採択された7作品の上映会を開催し、会員社の4K番組制作に関する知見を深めました。

2日にわたって行われた上映会にはA-PABの会員とメディア関係者合わせて延べおよそ170人が参加しました。主催者を代表して1日目に土屋専務理事、2日目に福田理事長が冒頭の挨拶に立ちました。

福田俊男 理事長の挨拶

「今回の4K8K放送番組制作奨励制度には24局からの応募があり、その中から7つの企画を採り上げました。作り手の思いが強く伝わるのが4Kならではだと思います。4Kとは何か、やはり4Kだと違うな、ここは4Kでいいのか、などと思いながら見ていただければと思います。地上波、BSなどですでにオンエアされ、早期にリクープできているものもあります。この制度が後押しして制作された作品もあったということですのでA-PABとしても有難いことです。
上映後に制作担当者が解説をします。その際に、皆さまからいろいろ質問してもらい、彼らへの激励になればと思います。それぞれ異なるジャンル、切り口の作品をいろいろな視点で最後までご覧ください」

A-PAB 福田俊男 理事長

土屋円 専務理事の挨拶

「この制度は2017年度に7番組から始めまして、今回で2回目となります。地域の放送局では、4K番組を作る、まして8Kにはなかなか行きにくい雰囲気があると伺っています。一方でBSでは2018年12月から新4K8K衛星放送が始まり、2019年12月の末の受信可能機器が313万というところまでようやく来ました。オリンピックを追い風にこの勢いはおそらく止まらないだろうと伺っています。一方、地上波4Kの道筋が見えていない中、地域の放送局は、これまでテレビ番組は自分たちが担ってきたという自負があり、最先端の動きに無関心ではいられないということをよく伺います。ところが4Kで番組を作っても実入りが増えるわけではないという話も伺っています。 この制度は、地域放送局の4K制作力を高める、あるいは全体のピュア4K比率を高めるため、制作費の一部を支援させていただくものです。4K機材は低価格化していますが、まだ割高です。今回の7社も気軽に試写会を開くことはそうないだろうと思いますので、A-PABとしてこうした機会を少しでも増やせるよう努力して参ります。あわせて地域放送局やBS社の制作意欲を支援できるような施策を引き続き行えたらと思っております」

A-PAB 土屋円 専務理事

作品は1日目に、琉球朝日放送の「TERAKA ~始まりの型~」、スターチャンネルの「Our Cinema Paradise」、秋田テレビの「天女舞う敦煌 生駒里奈シルクロード見聞録」、北日本放送の「天空の剱 ~風吹ジュン北アルプス屈指の岩峰へ~」、2日目は北陸朝日放送の「奇跡の手仕事」、テレビ愛知の「3.7ナゴヤ球場で~23年ぶりに響いた歓声~」、東北放送の「小さな神たちの祭り」がそれぞれ上映されました。各上映の後に制作担当者が作品について解説を行いました。
各作品の内容と解説は以下の通りです。

琉球朝日放送「TERAKA ~始まりの型~」(ドラマ 46分)

内容:
沖縄伝統空手の「型」を交えながら、ローカルアイドルの苦悩と成長をアクションたっぷりに見せるコメディータッチのドラマ。空手道場館長の一人娘宮城千鶴は、道場再建のため新生空手アイドルグループ「TERAKA」のメンバーになる。デビューへ向けて稽古に励む「TERAKA」の3人を琉球明日放送の記者島あかりは、カメラで追い続ける。館長である千鶴の父親を狙う沖縄ヤクザの悪の手が忍び寄る中、果たして無事にデビューライブはできるのか?
沖縄を活かした躍動感溢れる映像が魅力。作品を締めくくる生放送デビューライブのシュール感も秀逸。

解説:
町 龍太郎(琉球朝日放送株式会社 東京支社営業部編成担当)
沖縄でドラマを作るのは非常に難しい状況だが、沖縄をテーマにキャスト・スタッフすべて沖縄の人で制作した。東京オリンピックで空手が正式種目になり、沖縄でも空手熱が高まっており、これをテーマに企画を進めた。ただ空手だけでは厳しいので、アイドルをからめて練り上げていき「空手×アイドル」というコンセプトが生まれた。4K制作にあたっては暗いシーンが多く、照明には苦労したがラストシーンの「TERAKA」3人の衣装やペンライトのカラーグレーディングは上手くいった。また格闘シーンなどでのハイスピード撮影は効果的に撮れた。
放送にあたってTwitterを利用した「カウントダウン告知」、「サイン入りポスタープレゼント企画」などを実施した。400件近い反応があり過去最高を記録した。感想の中には第2弾を希望する声も多数あった。ロケ地振興にも一役買った。また自分が営業も担当していることもあり、広告代理店と相談しながらスポンサーとのコラボCMも制作した。これは映画「CATS」の告知を「TERAKA」のメンバーがダンスで告知するもので、「TERAKA」の番組前や中で実際放送した。また出演している3人各自は、CM出演している地元の企業をまわり、少しずつセールスを頑張ってくれた。さらに、バナー利用、ポケットティッシュ配り、空手道場でのポスター張りなども実施した。
今後の展開としては、「TERAKA」のLIVEや上映会などを検討している。またエキストラはオタクの人が多く「Tシャツはないのか?」、「握手会はないのか?」などの声もあった。第2弾として「空手VSムエタイ」などで海外展開ができないかなどを検討していきたい。

質疑応答より

  • ずっとロケには立ち会った。
  • この番組を放送した月曜日19時は、月に1度だけローカル制作枠で、それ以外はテレビ朝日の家族向けバラエティーをやっている。
  • 4Kロケでの遠近感・フォーカス確認については、カメラマンにアシスタントがつきっきりで、バミリながら行った。何度も取り直したが、満足のいくものになったと思う。
琉球朝日放送㈱
町 龍太郎 東京支社営業部編成担当

スターチャンネル「Our Cinema Paradise」(ドキュメンタリー 27分)

内容:
新潟県妙高高原にある1911年に建設された日本最古の映画館の上野館長(31歳)は、60年近く稼働している35mm映写機での上映にもこだわり、作品の選定や運営までほぼ全てを一人でこなす。映画館復興に尽力した人、そこで結婚式を挙げた女性、地元の映画好き、遠方から集まる客たち。そんな人々に支えられ期待に応える上野館長の姿や、映画愛好家によって復興再生されたノスタルジックな有形文化財の映画館を追う作品。
BS10スターチャンネル初のオリジナル番組であり「ドローン撮影」や「一眼レフ撮影」など4Kの様々な撮影手法を駆使して、歴史やディテールを紹介する。

解説:
青山 功(株式会社スターチャンネル プロデューサー 現在、囲碁将棋チャンネル 渉外部)
倉沢 尚宏(フリー・ディレクター)

映画専門チャンネルが映画作品ではなく自社番組を制作するということで、今までにない企画力が求められ、今回取り上げた109年目の「高田世界館」以外にも日本にある設立後100年を超える古い映画館をシリーズ化することも念頭に制作した。
フィルムという最も古い映像メディアを上映している映画館を、最先端の4Kで撮影することにより100年間の空気感を映し出せるのではないかと思った。初回は昨年12月1日に放送し、その後もリピートで、スターチャンネル4Kでノンスクランブル放送している。また2020年3月には「高田世界館」の新しい広場のお披露目の際にこの番組の記念上映も決定している。
最初の段階で、4Kに相応しい記録価値のあるもので、映画専門チャンネルらしい作品を考え、100年以上も経つ映画館を若い支配人が運営していることは興味深いと思った。
遠方の「高田世界館」に何度も行けず、最初のロケハン時にできるだけ多くの話を聞き、あとは撮影の現場で話を聞きながら撮った。依頼したレンズの問題で画角が17:9となってしまうため撮影時に頭のなかで16:9に変換し、編集する前に実際に直してもらった。4Kでドローンやオズモ(ハンドヘルド型スタビライザー搭載カメラ)などの機材を使用した。自分が最も4Kを実感したのは、データが重いこと。ディレクターが自分のノートパソコンでオフライン編集する時に、重くて思うようにいかずストレスとなった。タイトルを「Our Cinema Paradise」と付けたのは、古いだけでなくそれぞれ面白いエピソードを持つ映画館がたくさんあることを、スターチャンネルを見ている映画愛好家に届くようなものを創ってシリーズ化したいから。ロケでは、例年にない夏場の天候不良による再三の撮影スケジュール変更などで苦労した。

青山 功 ㈱スター・チャンネル プロデューサー(制作当時・左)
倉沢 尚宏 フリー・ディレクター(右)

秋田テレビ「天女舞う敦煌 生駒里奈シルクロード見聞録」(ドキュメンタリー 46分)

内容:
開局50周年記念番組として制作されたシルクロード紀行。秋田県由利本荘市生まれのタレント生駒里奈が、古刹・正乗寺の山門に描かれた天女のルーツを求めて中国敦煌の世界遺産「莫高窟」を訪ねる。柳葉敏郎のナレーションによる中国甘粛省広播電視総台との共同制作作品。莫高窟の壁画に描かれた4,000体もの飛天の変遷を辿り、人々が天女に込めた思いを探る。ラクダに乗ってのシルクロード体験、天女をモチーフにした敦煌舞踊観劇、地元グルメなど紀行番組の要素も交えながら生駒里奈が辿る見聞録。
35年前に敦煌遺跡群を、全6回シリーズの「甘粛紀行」として制作した実績のある秋田テレビならではの重厚で貴重な国内外の映像ドキュメンタリー。

解説:
高橋 聡(秋田テレビ株式会社 情報制作部専任部長)
秋田市と甘粛省の省都蘭州市が友好提携を結んだことをきっかけとした1984年の日中共同制作「甘粛紀行」6回シリーズ以降、互いに交流を続け35年という節目、秋田テレビの開局50周年の機会に、再び日中共同制作した作品。
ロケハンで敦煌を訪れた際、「天女」が敦煌のシンボルとして愛されていることを知り、日本でもなじみ深い存在であることからテーマとすることとした。初めての4K番組、しかも久々の共同制作であるため、多くのことが手探りだった。日本からはディレクターの自分とプロデューサー、カメラマン2人の4人。機材は全て中国側からで、カメラ2台を借用。音声、照明ほかスタッフは全て甘粛省広播電視総台。撮影日数は移動日を含めて1週間。今回は敦煌を舞台にした番組だったが、実はもうひとつ、蘭州市を生駒里奈さんが旅する55分番組を制作した。大規模な砂嵐が発生したため、蘭州から敦煌への飛行機が欠航、寝台列車で16時間かけて移動したこともあり、55分番組2本を実質ロケ日数4日間でこなす厳しさだった。また、比較的自由に使えるドローンの映像をはじめ、先方が大量に撮影してくれたのは良かった半面、2Kと4K、PALとNTSC素材が混在したことは課題だった。日本で改めて映像を見て、4Kの緻密さ、美しさに感動した。アップはもとより、ロングの風景の美しさが際立つ。交流を続けてきた敦煌や世界遺産の莫高窟を4Kで撮影できたことは大きな財産となった。35年の間に大きな変貌を遂げた中国において、敦煌も近代化、観光客増加のために石窟の保存・管理が年々困難になっていると聞いた。秋田テレビが保存する35年前の映像と今回の比較など、新たな共同制作番組も考えられるかもしれない。

質疑応答より

  • 中国甘粛省広播電視総台は、4K放送はまだ行っていないがSONYの4Kカメラを8台所有し、基本的には4Kで制作しているとのこと。
  • 生駒さんは撮り直しができなかった。
  • ローン撮影は規制も緩いので、中国側は手馴れているようだった。
  • 秋田と甘粛省を互いに取材するという話もある。
  • メディアはSXカード(90分)を20枚持って行き、12枚を使用。
  • 6月頭の撮影、10月頭の放送と決まっていたので、レギュラー情報番組を抱えながら週1日、2日をこの番組の編集に費やし、2本に3か月ほどかけた。
  • 莫高窟45屈の映像は、PALの2Kで、敦煌研究院のもの。
  • 秋田テレビでの放送後、10月にBSフジでも4K放送した。
  • 反響としては、敦煌の様変わりに驚いたこと、20代前半の女性のナマの反応が見られてよかったなど。
秋田テレビ㈱
高橋 聡 情報制作部専任部長

北日本放送「天空の剱 ~風吹ジュン北アルプス屈指の岩峰へ~」(ドキュメンタリー 46分)

内容:
開局60周年の記念番組として、67歳の女優風吹ジュンがふるさと富山の北アルプス剱岳(標高2999m)に挑む姿を描いた作品。自由を追求する女優の生き様にカメラが密着し、登頂の過程と彼女の人生や心の動きを追いかける。衰え知らずの好奇心と行動力で新たな目標に向かって突き進む彼女は北アルプス屈指の難所、名峰「剱岳」登頂を決意。岩壁登りの練習や体力づくりに励む様子も交え、風吹さんの挑戦を追う。シニア世代に生きる勇気を届ける内容。
1年間、忙しいドラマ撮影等の合間を縫ってトレーニングを重ねた風吹さん。アルプスの壮大な景観とともに登頂時に撮影された緊張感あふれる映像も見どころ。

解説:
中水 康之(ディレクター)
風吹さんの剱岳挑戦に恥じないよう、我々もこれを鮮明に記録しようと制作した。北日本放送としては初めての4K撮影だったので、撮影機材を新規で揃え、編集機はレンタルだった。
放送は富山県内ローカルで昨年8月に、その後BS日テレの4Kと2Kのサイマル放送でオンエアした。視聴率は、他局で高校野球をやっていたが、平均で8.9%、部分的には10.5%に上昇した。
取材日数は登山部分が4日間、その他のシーンを合わせて9日間だった。撮影日程は、登山者が少ない時期、風吹さんの日程等で7月上旬に設定した。
登山ロケは天候との勝負なので約10日という長いスパンを準備した。1日目は標高2300mの山荘で高所に順応し、2日目にキャンプ地の小屋まで7時間かけて移動した。アタック当日は朝3時に起床し、天候が難しい状況の中、ガイドさんの絶妙な判断で5時間かけて奇跡的に登頂することができた。4Kカメラは、登山時用、地上用、風吹さん用、空撮用など、手探りで考えながら使い分けた。音声マンはガイドの費用もかかるので同行せず、ピンマイクのレコーダーを使用した。剱岳アッタク時の人員は風吹さん含めて8人とキャンプ地の連絡要員1人の計9人だった。ガイドは風吹さんにベテランの方を、カメラマンにも1人ずつ付けた。風吹さんはマネージャー、スタイリスト、ヘアメイク無しで臨んだ。

質疑応答より

  • カメラマンの1人は登山スペシャリスト、風吹さん付きの人も剱岳登山の経験者。
  • 下山シーンは、雨が降って来たことと撮影スタッフの体力消耗を考えて撮影しなかった。
  • 風吹さんはメイクを自分で行った。血圧、心拍数などは頻繁に事務所に連絡した。
  • 次の4Kコンテンツも風吹さんで検討している。
  • 昨年11月にBS日テレで放送した際は、開局後間もないということもあり、データ変換を2回行うなどしたと聞いている。
北日本放送㈱
中水 康之 報道制作局 報道制作部

北陸朝日放送「奇跡の手仕事」(ドキュメンタリー 46分)

内容:
今年(2020年)、東京国立近代美術館工芸館が日本海側初の国立美術館として、石川県に移転オープンする。江戸時代に花開いた加賀百万石の文化が今なお息づく地で、あらゆる生活文化の中に伝統工芸が浸透する日本屈指の伝統工芸王国の技を取材。三代目藩主、前田利常が開いた「御細工所」がルーツとなった緻密な職人の「手仕事」。超絶技巧の数々を克明に映し出し、これまでの映像技術では伝えきれなかった伝統工芸の素晴らしさを4K映像でより深く稠密に表現する。
自局での放送だけでなく、文化継承の事業的側面も持ち、更に工芸館移転に合せたプロモーションとの連動、県や市などとの2次活用を進めるなど発展性のある企画。

解説:
伊藤 祐介(北陸朝日放送株式会社 東京支社業務部副部長兼コンテンツ事業部)
岡崎 俊克(株式会社フィックス 映像制作事業部プロデューサー)
東京国立近代美術館工芸館が金沢に移転されるという話があったところに、A-PABの奨励制度があることを知り、マネタイズを含めた展開ができないかと考えた。今しか撮れないもので、最高峰の技術で撮ろうと「手仕事」がテーマとなった。今後は、行政のプロモーションと時期を合わせて地上波等で放送したい。視聴者に、「工芸作品を是非ナマで見てみたい」、「先生の作品に触れてみたい」と思ってもらえれば嬉しい。その場合、子会社で旅行会社も経営しているので、工芸館で作品を見て、人間国宝の先生と会えるような企画など、さまざまな展開に繋げることができると思う。
石川県は前田家、加賀百万石の工芸大国であり、これまでもHDで撮影してきたが、4K8Kが出てきたので、どれくらい深く、美しく、奇麗に表現できるのか試みた。手仕事はミクロの世界。特に87歳の人間国宝、吉田美統(よした みのり)さんは、数ミクロンの金箔を貼る際に手元が殆ど震えないほどの技術があり、密着取材は恐らく最後だろうから、4Kで全工程を撮りアーカイブとしての役割も果たすことが出来た。石川県は工芸の人間国宝が9人と日本一で、そのうち2人を含む7人に出演していただいた。

質疑応答より

  • 4Kではカメラワークそのものよりもピント合わせが難しく、更に照明のハードルが最も高かった。限られた時間で撮ることで手一杯だった。
  • 音については、BGよりも金属を叩く音などをもっと聴かせる演出もあると思う。
  • ロケ期間は約3か月。それぞれの工程で時間をかけるので長くなった。
  • マネタイズについては、地上波や番販だけでなく、行政のプロモーション、旅行関連、  インターネットでの商品販売、百貨店への卸しなど様々な展開ができると考えている。
㈱フィックス 岡崎 俊克 プロデューサー(左)
北陸朝日放送㈱ 伊藤 祐介 東京支社業務部副部長(右)

テレビ愛知「3.7ナゴヤ球場で~23年ぶりに響いた歓声~」(ドキュメンタリー 25分)

内容:
星野が投げ立浪が打った懐かしのナゴヤ球場で、昨年(2019年)3月7日、23年ぶりにドラゴンズ1軍の公開ゲームが行われた。ドラゴンズOBの坂東英二が、事前から盛り上がるファンや、関わりのある昔ながらの店や球場周辺の人々を訪ねる。選手時代から付き合いのあるうどん屋では、星野仙一が大好きだったしゃけ玉弁当を食べ、中学生のころナゴヤ球場のボールボーイをしていたファンが経営する洋服店では選手との交流話で盛り上がる。ドラゴンズ好きが高じて観客席が見えるマンションを購入した熱狂的なドラファン親子にも密着。
ドローンカメラ、手のひらサイズなど6種類計9台の4Kカメラを使い、ナゴヤ球場に思いを抱く球場周辺の人々の表情や声とともに、興奮に包まれる球場の2日間の貴重な映像を記録した作品。

解説:
畑中 英之(テレビ愛知株式会社 エグゼクティブプロデューサー)
和田 仁(株式会社アイプロ 制作部長チーフプロデューサー)
テレビ愛知では3年前から4K制作を行い、カメラマン含めすべて自前のスタッフで2Kレベルの予算でやることを追求してきた。1回目の4Kは、動かない被写体として江戸時代の雰囲気が残る「有松の町並み」を紹介。2回目は、動く被写体として「国府宮はだか祭り」をダイナミックに撮った。
3回目の今回は、普段の2K番組を4Kで普通に撮ることを目標とした。難しかったのはモニターを見ながらでないとピントが合わせにくかったこと。ただ、トータルではやれば普通にできると思った。仮編集も2Kと同じように1~2週間。今使っている機材でも同じようなことができることが分かった。今後もテーマを変えて、年に1回程度は4K作品を作っていきたい。

質疑応答より

  • ドキュメントバラエティーのような作りだったが、リサーチが大変だった。また、名古屋球場はドームではないので雨が心配だった。
  • 全国放送を意識していなかったので説明不足のところがあったかも知れない。
  • ドローンは、ナゴヤ球場の許可は出たが、周囲が住宅で動かせなかった。俯瞰の映像は必要だったがそのような制約があった。
テレビ愛知㈱ 畑中 英之 エグゼクティブプロデューサー(左)
㈱アイプロ 和田 仁 制作部長チーフプロデューサー(右)

東北放送「小さな神たちの祭り」(ドラマ 1時間40分)

内容:
東北放送60周年記念ドラマ。東日本大震災で家族を失った被災者が、ある不思議な体験を通じて前向きに生きて行こうと決意するハートウォーミングな物語。令和元年度文化庁芸術祭テレビドラマ部門優秀賞受賞作品。
脚本は内館牧子。宮城県南部のイチゴ農家の長男、谷川亮は3月11日にアパート探しで上京していた。家族全員を津波で失った谷川は仙台で肉体労働をする8年後の今、人々が震災を忘れてしまっているように感じる。付き合って2年の恋人とも、自分だけが幸せにはなれないと、結婚に踏み切れない。そんな時、2人の前に1台のタクシーが現れ・・・。
千葉雄大(宮城県多賀城市出身)、土村芳(岩手県盛岡市出身)を主役に「震災を風化させない」というメッセージを「ドラマ」という形で発信し、拭い去れない記憶を抱えながらも再び前へ歩む東北の人々の希望を、1人の青年の姿を通して描く。

解説:
鈴木 雅人(東北放送株式会社 報道制作局テレビ制作部)
ローカル局としてのドラマ制作は、実に20数年ぶりだった。東日本大震災を被災した放送局、報道機関として、これまでもドキュメンタリーなどの特別番組を多数制作してきたが、被災者が今どんな姿で前を向いているのかを伝えるところに限界があった。今回はドラマという形でそこを切り取り、主人公が前向きに生きていく姿や犠牲となった家族への思いを描いた。これはドラマでなければ出来なかったことで、後世に残せる4K作品として完成させることができた。
私自身、普段はテレビ制作部で情報番組の担当をしており、ドラマ制作は初めてだったため、右も左もわからず、系列キー局(TBS)傘下のプロダクションからご指導いただいた。東北放送の社員としては、私のみが準備から撮影全日程に携わることができた。作品だけでなく、現場での経験、ノウハウを社の財産とし、後進に伝えていかなければと思っている。

質疑応答より

  • 放送については、東北放送で昨年(2019年)11月20日に放送し、今年3月14日に震災から9年目の直後に再放送する予定。系列含めて19局での放送も決まっており、全国放送ではBS-TBSが3月1日に4K放送することが決まっている。
  • 4Kで制作したのは、記念ドラマということもあったが、震災後の景色等の情景描写などをより鮮明に表現できるということで行った。
  • 人間ドラマ的なエモーションに訴えるということでは、主演の千葉雄大さんが宮城県の多賀城市出身で「被災当時は関東にいたが、地元の『被災』という部分に蓋をしていた。撮影が終わったので地元に帰って純粋に親孝行がしたい」と話された。彼のそうした思いが俳優としての表情を通じて、より一層伝わってきたと思う。
東北放送㈱
鈴木 雅人 報道制作局テレビ制作部

以上で7作品の上映と解説が終了し、この企画に協力した株式会社キュー・テックの今塚氏と小池氏がそれぞれ感想を述べました。

㈱キュー・テック 今塚 誠 チーフテクニカルアドバイザー

東北放送「小さな神たちの祭り」は、ドラマに没頭できたことが良かった。技術職の私が技術的なことを感じずに見られたのは、本当に内容が良かったのだと思う。ドラマではHDRで光の反射など細部まで見せるよりも、白で飛ばした方がカット変わりの時に光を目で追う必要がなく見やすいのではないかと感じた。

㈱キュー・テック 今塚 誠 チーフテクニカルアドバイザー(右)
㈱キュー・テック 小池 俊久 エグゼクティブプロデューサー

上映作品は年々クオリティが向上しており、やはり本業の方の作品は完成度が高い。地上波でも放送してほしい。北陸朝日放送の「奇跡の手仕事」は光、色、細部を表現する意味でHDR向きだと思った。今後は4K8Kの最大の特徴である広色域などの表現にチャレンジしていただき、良質で素晴らしいコンテンツを作っていただきたい。

㈱キュー・テック 小池 俊久 エグゼクティブプロデューサー
最後にA-PAB石田常務理事が、次のように締めくくりの挨拶をしました。

「2日間に亘って7作品を拝見しました。4Kは始まったばかりですので、当然4Kらしい作品に挑戦することは理解できます。また2Kで撮るようなものを敢えて4Kで撮ってみて、そのノウハウの蓄積もあったというお話もありました。4Kが当たりまえになれば、普段2Kで見ている番組も4Kでやることになりますので、やがてそういう時代が来るんだろうと思います。そこに向けてA-PABの奨励制度が少しでもお役に立ったとすれば、A-PABとしても望外の幸せです。
この制度は2回目ですが、来年度は予定しておりません。ところが、これほど良い作品が出て、皆さんの知見が増え、レベルが上がって行くのを目の当たりにしますと、何とか復活できないかという思いで見ていました。これからも4Kの時代が当たり前になるという前提で皆さん進んで行っていただければと思います。2日間どうもありがとうございました」

A-PAB 石田昭彦 常務理事
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