エンジニアリングサービス(ES)について

ESとは

デジタル放送(地上/BS/CS)のエンジニアリングサービス(以下、ES)とは、デジタル放送の魅力を表現する「高画質」「高音質」「データ放送」などのキーワードとは異なり、デジタル放送を支える”縁の下の力持ち”のような存在です。

ESとは何をするものなのか?一言で説明すると、ご自宅にある地上/BS/110度(広帯域)CS/BS4K対応のテレビ受信機の「ソフトウェア及び放送受信環境データを常に最適な状態にしておく仕組み」なのです。

たとえば、パソコンを利用している場面を想像して下さい。その最中に「ソフトウェアのバージョンアップをお願いします」というメッセージが出ると、ブロードバンド環境があれば、最新ソフトウェアをダウンロードすることで最新のサービスを享受できます。これと同様にテレビの世界では、放送波を使って受信機を自動的に最新の状態にすることができるのです。

デジタル放送では、EPG(電子番組表)、双方向データ放送、コンテンツ保護など、高機能サービスが行われています。これらのサービスは、受信機の内部にあるソフトウェアがコントロールしています。

ESの仕組み

では、どのように受信機内のソフトウェア及びデータを最新の状態に保つのでしょうか。
実は皆さんが気づかない間に、地上/BS/110度(広帯域)CS/BS4K対応受信機に向かってデジタル情報が送信されているのです。
この仕組みをわかりやすく解説します。

まず、ある受信機メーカーが「自社の受信機のソフトウェアをバージョンアップ(改良)したい」、あるいは「ソフトウェアの不具合を解消したい」と宣言をします。そして放送サービス高度化推進協会(A-PAB)に、「何月頃に、ESを実施したい」と申し込みします。

ソフトウェアのダウンロードは、BS放送のES、すなわち衛星の放送波を使います。ESには放送の時間割があって、「受信機メーカーさん、あなたはこの時間帯でお願いしますね」と、ソフトウェアのダウンロードの時間が決まります。これを編成と呼んでいます。

この編成が決まったら、今度は放送をしているBS局にその編成データ(メーカー・機種名、ダウンロード予定時間など)を送ります。

そうすると「近い将来、この受信機用のソフトウェアが、何時にダウンロードされますよ」というデータ(告知情報=SDTTと言います)が、BS局や110度CSプラットホーム局に設置されているSDTT装置から、24時間一定の周期でテレビ放送の電波に乗せて、全受信機を対象に送られます。

受信機がSDTTデータを受信して、皆さんがお持ちの機種・モデルがソフトウェアのバージョンアップの対象であると判明すると、受信機の中で「この時間に自分用のソフトウェアが送信されるから、準備をしなくては」というスタンバイの指示が出ます。

そして、いよいよその予定時間になるとソフトウェアが送られてきます。受信機チューナの一部に電源が入り、自分用のソフトウェアが受信できたと認識されると、それを受信機に取り込みます。

ソフトウェアの受信には二つの条件があります。それは「受信機に電源が入っている待機状態であること」、そして「ソフトウェアのダウンロードを、自動で行うことを選択していること」です。

最近、省電力を意識して、就寝の際にテレビ受信機の電源プラグを抜いてしまうケースもあるようです。しかしこの状態ではESの恩恵を受けることはできません。テレビ受信機の待機電力は、近年の技術進歩により極めて小さい消費電力で済むようになっています。是非、電源プラグは抜かず「待機状態」としていただくようお願いします。

このような仕組みにより、テレビ受信機は所有者も気がつかない間に最新のソフトウェア状態に更新されるのです。

ESの役割

ESの役割は、受信機の中にある受信機用ソフトウェアを最新の状態に保つだけではありません。放送サービスの更新などに伴い送信を行う「全受信機共通データ」を更新することも大事な役割です。

「全受信機共通データ」というのは、EPGなどで表示されるチャンネルロゴなどの受信機で共通に利用されるデータのことです。

地上デジタル放送では、この他に各地域の周波数リスト・変更情報が含まれます。具体的には「いつから、この地域で、新しい放送局が開局します」「新たに、この地域に、中継局が出来ます」「この地域では、送出パワーが増強されます」などのデータです。これは、放送局の電波環境が変更されるときに更新されます。受信機がこのデータを取り込むことで、放送受信環境を常に最新にしておくことができるのです。

ESの今後

このようなことは、昔のアナログ放送では考えられないことでした。デジタル放送になったことで、このような仕組みが構築され、さらに信頼性の高いシステムにするために地道に維持継続してきた成果と言えます。

デジタル放送対応受信機の累計出荷台数は、既に1億台を突破しています。受信機には高機能のものから普及タイプまで幅広いラインナップが整備されています。そうした動きに合わせて、ESの役割も益々重要になってきます。

これからもデジタル放送の”縁の下の力持ち”として、皆さんの受信機が最新の状態で利用できるように努めて参ります。

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